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2022.2.23

アライアンスとはどういう意味?M&Aとの違いについても解説

コンサル募集

戦略・経営コンサルティングなどの場面で頻出する「アライアンス」という用語の正確な意味をご存知でしょうか?アライアンスは企業の経営戦略の一環として実施されるものです。

本記事では、アライアンスとはどのような経営戦略なのか、そのメリットやデメリット、主な種類について解説します。

M&Aとの違いや関連ビジネス用語についても紹介していますので、コンサル関連業界の皆様はもちろんのこと、ビジネス教養知識の一つとしても、ぜひ参考にしてみてください。

アライアンスとは


英語のアライアンス(alliance)は、日本語で「同盟・協力」などを意味する言葉です。ビジネスシーンで使用される場合には、資本提携から事業協力までを包含する「事業提携」や「経営スタイル」を指します。

たとえば、以下のような文脈で用いられます。

  1. 「コロナ禍により、アライアンスに積極的な企業が増えつつある」
  2. 「新商品の販路を開拓するためにアライアンスを結ぶ」
  3. 「製品の共同開発のためにアライアンス企業を募る」
  4. 「企業文化の共有が難航し、A社とはミスアライアンスに終わった」

上記4つの例からもわかるように、アライアンスは「同盟・提携・連合・協力・協定・縁組」といった日本語に置き換えることが可能です。

企業同士の関係を指すことが一般的ですので、以下のような言葉に言い換えることもできます。

  • 企業間同盟
  • 企業間協定
  • 企業間連合
  • 企業間提携

また4.の例にあるように、提携に失敗したことを「ミスアライアンス」と言います。

アライアンスは企業の経営戦略の一つに位置付けられます。

そのメリットは、「利益追求」という同じ目標に向かって資金や技術、人材などの経営資源を共有し合うことで相乗効果が生まれ、市場における競争力を確保・強化できる点です。

狭義には、双方の立場が対等である場合のみをアライアンスと称し、対等性がない場合には、アライアンスとはみなされない場合もあります。

たとえば、後述するように、M&Aはアライアンスとはみなさないのが一般的です。

企業同士がアライアンスを結ぶケースが多いですが、産学連携の場合には、企業と大学、研究機関などがアライアンスを結ぶケースもあります。

アライアンスとM&Aの違い


アライアンスとM&A(合併と買収)の共通点は、新規事業の立ち上げや利益拡大を目的に実施される経営戦略であるという点です。

その一方、両者の決定的な違いは、経営権の移動が発生するか否かという点にあります。

アライアンスはそれぞれの企業が自社事業を維持しながらお互いに協力体制を築く手法であるのに対し、M&Aはどちらか一方の企業に吸収される形となり、経営権の移動が発生します。

たとえば、M&Aの代表的な手法である株式譲渡では、譲渡企業(売り手)が保有している株式を譲受企業(買い手)に譲渡することで、経営権を譲受側に譲り渡します。

これによって企業間の独立性は保たれなくなります。

アライアンスの場合は経営権の移動が発生しないため、M&Aよりも比較的実施しやすいと言えますが、自社のノウハウや技術が他社に流出するリスクがある点には注意が必要です。

アライアンスの種類


アライアンスの主な種類について解説します。

①業務提携

業務提携とは、複数の企業が技術・人材などの経営資源を出し合うことで協力体制を築くための提携です。業務提携では業務面にフォーカスした協力関係を結ぶため、資本の移動は発生しません。

業務提携の主な種類には、技術提携、生産提携、販売提携があります。

技術提携

技術提携とは、ノウハウや技術、人材を企業間で共有しあうための業務提携です。たとえば、特許やノウハウのライセンス契約、新技術・新製品の共同開発契約などが技術提携に該当します。

それぞれの企業が持つリソースや専門性を掛け合わせることで、技術力の底上げや高度な領域への進出が可能になります。

また、優秀な能力を持つ従業員の存在が他の従業員への刺激となったりするといった効果も期待できます。

生産提携

生産提携とは、自社のリソースが不足している業務工程に関して、他社に協力してもらうための業務提携です。主に製造業において実施されます。

生産提携は製品の安定供給や顧客満足度の維持に有効な手法ですが、自社製造と変わらない品質を維持するために、業務指示や管理を徹底する必要があります。

販売提携

販売提携とは、企業同士で販路を共有しあうための業務提携です。販売・営業・サービス業などで実施されます。

たとえば、新製品のリリース時に販路を確立する場合や、既存製品の販路を広げる場合に有効な手段です。

提携先企業ですでに構築されている販路を活用することで、双方の事業展開をスムーズに進めることが可能になります。

②資本提携

資本提携とは、複数の企業が資金面などで協力体制を作るための提携です。

たとえば、お互いの株式を持ち合う、あるいは、一方の会社が提携先の株式を取得するといった方策は資本提携に該当します。

お互いの株式を取得することによって技術・人材などの面だけでなく資金面でも協力することになるので、より緊密な提携体制が構築されることになります。

ただし、資本提携はM&Aとは異なり、企業間の対等性・独立性が保たれます。

M&Aの場合は通常、譲受企業が譲渡企業の50%超の株式を取得しますが、資本提携ではお互いの経営への影響を最小限にするために、株式持分の比率を1/3未満に抑えるのが一般的です。

③産学連携

産学連携とは、教育機関や研究機関と民間企業の間で協力体制を築くための提携です。

産学連携の代表例としては、名古屋大学と豊田合成株式会社などが共同で実施した青色発光ダイオード(LED)の研究開発などが挙げられます。

④オープンイノベーション

オープンイノベーションとは、他企業から技術・アイディア・ノウハウなどを取り入れるための協力体制です。

自社以外の組織が持つ強みを取り入れることで、製品開発や技術・組織改革を促進することを目的として実施されます。

最近ではトヨタ自動車やソフトバンクグループなど、日本を代表する大手企業もオープンイノベーションに力を入れており、今後もさらなる発展が期待される提携形態です。

オープンイノベーションについては下記の記事で詳しく解説しています。

▼関連記事

オープンイノベーションとは?定義や取組み事例を紹介!

アライアンスのメリット


企業間の独立性を保ったまま実施されるアライアンスは、人的・金銭的リソースを抑えることができ、契約締結、解約も容易である点がメリットです。

また、企業同士がお互いの強みを活用し合うことによる、相乗効果も期待できます。

アライアンスは比較的短期間で導入しやすい経営戦略であることから、利益に直結する施策との相性が良いのが特徴です。

たとえば、新製品・サービスの開発、マーケットの拡大・開拓、販路拡大、コスト削減、技術や知識・ノウハウ・人材の補完といった目的で実際に導入されています。

参照:企業間アライアンスの成功と失敗を分ける分水嶺とは? ~ 企業のイノベーション・企業間アライアンスに関する動向調査 ~| NTTデータ経営研究所

アライアンスのデメリット


アライアンスはM&Aなどと比較して導入しやすく、自社とパートナー企業のシナジー効果も期待できる一方、成果が保証されている訳ではありません。

想定通りに連携が進まず、短期間でミスアライアンスに至る場合や、場合によっては損失を出してしまう可能性もあります。

特に、自社のノウハウや技術が他社に流出するリスクがある点に注意が必要です。

アライアンスは比較的容易に実施しやすくメリットも大きいものの、企業間で技術やノウハウを共有すれば、必然的に情報漏洩リスクが高まります。

情報漏洩のリスクを未然に防ぐためには、アライアンスを結ぶ企業のセキュリティ意識や対策を事前に把握し、自社の資産を安心して共有できる相手なのかを見極めることが必要です。

アライアンスの関連用語


ここでは、コンサルティングの場面で頻出するアライアンスの関連用語の意味を簡潔に紹介します。

アライアンス事業

アライアンス事業とは、アライアンス契約を結んだ企業と共同で行う事業のことを指します。

アライアンス事業は、既存事業を発展させる目的や、新規事業の立ち上げを目的とする場合があります。

アライアンスパートナー

アライアンスパートナーとは、アライアンス契約を結んだパートナー企業を指します。

アライアンスパートナーとの間で、さまざまな経営資源の共有を行うことにより、双方の発展が期待できます。

また、アライアンスパートナーとの間で人材交流を行うことで、社員のモチベーションアップや意識改革を促す場合もあります。

アライアンス戦略(アライアンス契約)

アライアンス戦略とは、複数の企業が技術や人材、資本などの経営資源を出しあい、事業のさらなる成長や競争力を確保するための経営戦略を指します。

アライアンス戦略を実施する際に当事者間で締結される契約をアライアンス契約と言います。

アライアンス契約はM&Aなどと比べて自由度が高く、戦略の構築後も解消や継続を柔軟に変更できるという特徴があります。

大手企業同士の資本提携やベンチャー企業同士でのオープンイノベーションなど、さまざまな形態のアライアンス戦略が見受けられます。

またアライアンス戦略のゴールは、新規事業の立ち上げや事業拡大など、目指す利益の内容によってさまざまです。

たとえば、人手不足に陥っているベンチャー企業が大企業と業務提携を結ぶことにより、人材や資金といったリソースを確保するケースや、

技術系企業同士がお互いの専門性を活かしながら新製品を共同開発するケースもあります。

あるいは、開発力を持っている企業が生産力・営業力のある企業とタッグを組むことで相乗効果が生まれ、開発・製造・販売の流れを効率化させることも可能です。

アライアンスが関係するコンサルティング領域

アライアンスが関係する主なコンサルティング領域は、経営者層を対象に実施される戦略コンサルです。

戦略コンサルタントは、企業の経営層に対して中長期の経営戦略や事業戦略に関するコンサルティングを行う過程で、クライアント企業にアライアンス戦略を提案する場合があります。

この記事の冒頭でも解説したように、アライアンスは企業の経営戦略の一つに位置付けられます。

アライアンスを結ぶことで「利益追求」という同じ目標に向かって資金や技術、人材などの経営資源を共有し合うことにより、市場における競争力を確保・強化することが期待されます。

戦略コンサルの業務内容については下記の記事でより詳しく解説しています。

▼関連記事
戦略コンサルタントとは?仕事内容・年収・必要なスキル・未経験からなる方法を徹底解説!

まとめ


アライアンスとは、「利益追求」という共通の目標に向かって複数企業が協力し合う体制を指します。

アライアンスはM&Aとは異なり、企業間の独立性を保ったまま企業間でリソースなどを共有できる点がメリットです。

その一方、自社のノウハウや技術が他社に流出するリスクがある点には注意が必要です。

アライアンスは企業の経営戦略の一つに位置付けられています。

戦略コンサルティングの過程では中長期の経営戦略や事業戦略のソリューションの一つとして、クライアント企業にアライアンス戦略を提案する場合があります。

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