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2021.12.6

RPAとは?注目される背景やメリット・デメリットをわかりやすく解説

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RPAはPC上の業務をマンパワーに代わって、的確かつ迅速に処理する自動化システムです。現在多くの企業が、生産性の向上のために導入を検討しています。

とはいえ、「RPAは産業ロボットやAI、Excelマクロとは何が違うのだろう?」という声も聞かれます。また、なぜそれほど注目を集めているのでしょうか。

今回の記事では、そういったRPAに関する疑問を解消するため、RPAについてわかりやすく解説します。

RPAとは

RPAとはロボットによる業務自動化を意味します。PC上で行われ、なおかつルーティンワーク的な定型作業であることが、現時点でのRPA稼働領域の要件です。

RPAについて、以下の2点から詳しく見ていきましょう。

  • ロボットによるPC業務の自動化
  • RPAツールが対応できる業務の要件

ロボットによるPC業務の自動化

RPAとは「Robotic Process Automation」の略で、ロボットによる主にコンピューター上の業務を自動化する概念を意味します。

自動化システムそのものを指す場合や、具体的な商品としての自動化ツールを指す場合もあります。

RPAツールが対応できる業務の要件

RPAによる自動化に対応できる範囲は、基本的に以下の2つの要件を満たす業務領域です。

  • 手順やルールが決まっている定型業務
  • PCのみで完結する業務

それぞれを以下にて補足していきます。

手順やルールが決まっている定型業務

RPAは人間とは異なり、単調作業を正確かつスピーディにこなせます。そのため、​​手順やルールが決まっているルーティン作業を繰り返すような定型業務に向いています。

具体的には以下のような業務です。

  • 営業数字をまとめるグラフ・図表の作成
  • メールの一斉配信
  • データのダウンロードやアップロード
  • 社員の勤怠データの入力
  • 一定ルールに基づくデータのコピー&ペースト

PCのみで完結する業務

RPAはPCにソフトとしてインストールされ、PC上で行われる一連の作業工程を記憶して業務を行うのが基本です。そのため、PC上で完結する業務に向いています。

具体的には以下のような業務です。

  • 請求書・経費の処理
  • 受発注・納品処理
  • 電話・メール対応のサポート
  • データ収集・整理・分析

これらの作業はPC上で開始され、業務に必要な情報もPC上にあり、最終的にPC上で業務が完結します。このようにPCで完結する業務の繰り返しであれば、RPAはその正確さとスピードという強みを最大限に発揮します。

RPAの仕組みを簡単に説明

RPAの仕組みは、人間がコンピューター上で処理する定型作業を、ロボットに記憶させて自動化する、デジタルレイバー(仮想知的労働者)と呼ばれる手法を取っています。

手順として、自動化したい業務工程をRPAに記憶させ、RPAツールが工程にもとづいて業務を遂行します。また、記憶させた工程は、柔軟に変更可能です。

そのため、導入後に作業工程が変更しても、記憶させた工程の変更部分を修正するだけで対応できます。

また、RPAに業務を遂行させるためには、業務手順を明確に示すシナリオが必要です。現実の作業手順をきちんと整理して作成しなければなりません。

シナリオは、手順変更やシステムアップデートに応じて再登録が必要で、シナリオが間違ってしまうとRPAも間違った手順のまま作業を進めしまうので注意が必要です。

かつてのRPAはシナリオ作成のためにコーディング作業が必須であり、現場の人材にプログラミングの知識やスキルがなければ活用が困難でしたが、近年のRPAはプログラミングの過程が省略され、人によるマウスやキーボードの操作を認識して自動化するものが標準化し、導入しやすくなりました。

RPAが注目を集める背景

RPAの導入企業は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の勢いある進展が後押しして年々増加する傾向にあります。そしてRPAが注目される背景には、DX以外にも以下のような事情が考えられます。

  • 少子高齢化による労働力不足
  • 働き方の多様化
  • グローバルビジネスにおける競争力の必要性
  • 2025年の壁への対応

それぞれの事情について詳しく解説します。

少子高齢化による労働力不足

少子高齢化が進んで労働人口が不足する中、多くの企業が慢性的な人手不足の課題を抱えています。業務領域によっては、RPAという24時間365日、常に正確無比でスピーディに働けるデジタルレイバーが人手不足の解消に役立ちます。

RPAは基本的には人とシステムの間で発生する、単純業務の担い手としてオフィスに導入されます。

工場のオートメーションと同様に、オフィスにおいても業務のライン化が可能になり、業務効率化を通じての生産性向上が期待できます。

働き方の多様化

仕事に対する価値観の変化や国を挙げての働き方改革促進の影響もあり、実際に働き方の選択肢は多様化しています。単純業務を任せられるRPAツールを導入すれば、従業員は労働時間を短縮でき、よりクリエイティブな業務に集中できます。

その結果が、ワーカーの仕事に対する満足度向上につながります。少ない労働力で生産性を維持することを目的のひとつとした働き方改革は、RPAの導入と方向性が一致していると言っても過言ではないでしょう。

グローバルビジネスにおける競争力の必要性

アメリカやヨーロッパの先進諸国は日本よりもRPAの導入が早く、多くの企業がRPA活用によって競争力を高めています。日本国内の企業もグローバル経済の中で競争力を高めていくためには、RPA導入による経営効率の向上が喫緊の課題です。

DXの進展は、RPA導入の障壁を低くする働きがあります。DXの進展の影響で多種多様なRPAツールが、導入しやすい適正なコストで流通し、大企業だけでなく中小企業も導入を検討できる環境が生まれているからです。

この調子で大企業から中小企業までRPAの導入が進めば、日本企業がグローバル経済の中で取り残される可能性が低くなり、競争力を得ることができます。

2025年の壁への対応

IT人材が40万人規模で不足し、企業の基幹システムの約6割が構築20年を超え老朽化対策が課題になる「2025年の壁」に、RPA導入による対応が有効です。とりわけ「現場スケール型RPA」が、現場のリテラシー向上を促すと期待されています。

出典:経済産業省DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜

「現場スケール型RPA」は基幹系システムの刷新と、IT人材不足の2大経営課題の解決の糸口となります。なぜなら、現場のリテラシー向上が生産性を担保し、他のデジタル技術との連携も促進してビジネスモデルを進化させるからです。

RPAの国内需要や将来展望については以下の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ読んでみてください。

▼関連記事
RPAはフリーランスで稼げる?単価相場や案件の動向・必要なスキルや将来性を解説

RPAツールの3タイプ

RPAツールはオンプレミスのデスクトップ型とサーバ型、そしてクラウド型の3つのタイプにわかれています。

ここではどのタイプを導入すべきか比較検討ができるように、RPAツールの3タイプを詳しく解説します。

デスクトップ型(オンプレミス)/小規模導入向け

オンプレミスのデスクトップ型RPAツールは、それぞれの社員が使用するPC単位でインストールして使用するシステムです。少数社員が活用する場合に向いています。

RPAツールを利用したいPCにだけインストールすればよいので、小規模なら導入する費用を抑えられます。しかし自動化の利用規模を大きく広げる際には、オンプレミスのサーバ型やクラウド型に切り替える必要があります。

サーバ型(オンプレミス)/大規模導入向け

サーバ型RPAツールは、自社サーバおよび社員のPCにインストールするシステムです。大人数の社員が活用する大企業の導入に向いています。

サーバを設置してPCのRPAツールを管理するので、費用はどうしても高額になります。しかし大人数で使いこなせば、1人あたりの費用は抑えられます。

クラウド型/フリー体験で検討可能

クラウド型のRPAツールは、サービス提供元のシステムをオンラインで利用するクラウドサービスです。

現在では多くのサービスが、フリートライアルによって体験してから導入を検討できます。導入が手軽で、コスト負担もオンプレミスより低く抑えられる場合が多いため、新規導入の場合クラウド型を選ぶ企業が増えています。

ネット環境があれば使えるクラウドツールなので、リモートワークを推進する場合にも好都合です。しかし大規模導入の場合は、オンプレミスのサーバ型の方が経費効率において良好なケースもあります。

利用規模を徐々に拡大していく途中の企業にも、おすすめできるタイプのRPAです。

総務省が定義するRPAの3つのクラスとは

総務省はRPAを、レベル的に以下の3つのクラスに分けて定義しています。

  • Class1:RPA(Robotic Process Automation)
  • Class2:EPA(Enhanced Process Automation)
  • Class3:CA(Cognitive Automation)

各クラスの定義をご紹介します。

Class1:RPA/ITを活用した業務自動化

Class1は、最も基本的なRPAで、PCで処理されるルーティン的業務を自動化することに用いられます。発生日時や発生頻度、手順やルールが決まっている作業を自動化できます。

工数がいくら多くて複雑な業務であっても、人間的な思考判断を必要とせず、パターンが決まっているものであればRPAによる自動化が容易です。

Class2:EPA/より高度な業務自動化

Class2は単純作業以上の、より高度な業務自動化を実現します。

組織の中での業務には、パターンが決まっておらず人間の思考による判断が必要なものも多いです。それらはRPAにAIを活用した機械学習を取り入れることにより、ルーティンを超える比較的高度な自動化を実現できます。

人間の思考による判断が必要なのは、主に「非構造化データ」を扱う場合です。非構造化データとは、顧客からのメールの内容など、データベース化が困難なものを指します。

たとえば、いくつかの条件が含まれる顧客からの発注メールを読み、内容を理解して配送手続きをする業務には、基本的に人間の判断が必要です。

しかし機械学習によって類型をルーツ化できるものであれば、Class2にて自動化できる可能性があります。

Class3:CA/究極は認知機能の自動化

現段階でのRPAの最終形態とされるのが、Class3のCA(Cognitive Automation)です。多種多様なデータから必要情報を整理・分析し、それに即した意思決定を行います。

たとえば、本社に各支店から寄せられる日次実績のデータを分析して、支店ごとの理想的なフォロー明細を自動的に作成するなどの、高度な判断を要する業務をこなせるRPAです。

RPAに連携する機械学習は、与えられるデータによってディープラーニング(深層学習)機能で自ら学習し、意思決定の精度を高めていきます。現時点(2021年現在)では、Class3に到達しているRPAは存在しません。

しかし近い将来において、実用できるものが登場するだろうと期待されています。

RPA導入|5つのメリットとは

RPA導入には主に以下のような、5つのメリットがあります。

メリット 概要
労働時間是正 ルーティン的な作業にかかる時間を大幅に短縮、労働時間の是正を実現できる。事実、大手銀行各社はRPAをいち早く導入し、煩雑な20種類の事務処理作業をRPAに任せることで、年間8,000時間相当の事務処理作業削減を実現(※)。
ヒューマンエラーの削減 人為的なケアレスミスの心配がない。作業上のミスが発生したとすれば、それはそもそも登録したプログラムに問題があるか、システムの変更を反映するプログラムの修正をしなかったかのどちらかが原因。
業務効率化による生産性の向上 業務の選択を間違えなければ、正確さとスピードにおいてマンパワーを大きく凌駕できる。その結果、業務効率が飛躍的に向上し、生産性向上に貢献も可能。
コア業務へのリソース集中投下が可能 比較的単純な代替えが効く業務をRPAに任せることにより、コア業務や戦略的な業務にリソースを集中投下できる。その結果、リソースの絶対量は変わらないまま収益構造を安定化させられる。
従業員のQOL(クオリティーオブライフ)の向上 的を射た導入により、従業員の働き方や労働時間、労働環境などにポジティブな影響を与え、QOL(クオリティーオブライフ)の向上の実現が期待できる。

※参考:総務省|情報通信統計データベース|RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)

RPA導入|3つのデメリットとは

RPA導入には、以下のような3つのデメリットがあります。

デメリット 概要
導入コスト・初期投資の負担 クラウドであれば数万円単位で導入できるものの、デスクトップ型は数十万円、サーバ型は数百万か一千万円以上となるケースもある。小規模から始めたい企業はクラウド型か、少なくともデスクトップ型がよい。
管理体制の不安 従業員がRPA未経験である場合が多く管理できる人材が少ない。RPAはプログラミングよりハードルが低いものの、一朝一夕で使いこなせるわけでもないため、ロボットの管理体制に対する不安が発生している。
セキュリティリスクの増加 巧妙化するサーバー攻撃での、不正アクセスなどで被害を受けるリスクがゼロとは言えない。トラブルが起きる前に、セキュリティ対策が求められる。

※参考:総務省|情報通信統計データベース|RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)

RPAの導入手順

RPAを実際に導入する手順は、以下のとおりです。

  • Step1: 自動化すべきタスクをすべて洗い出す
  • Step2: 取捨選択して自動化するタスクを決定する
  • Step3: タスクに適したRPAツールを選ぶ
  • Step4:トライアルで体験してみる
  • Step5:活用した効果を検証する
  • Step6:本格的に導入・運用する

導入事例は以下の記事にて、詳しくご紹介しています。ぜひこちらも読んでみてください。

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RPA副業は稼げる?副業で稼ぐ方法と単価相場を紹介

RPAと産業ロボット・AI・マクロとの違いとは

RPAと産業ロボットやAI、Excelのマクロ機能は一見似ている面もありますが、それぞれにおいて明らかな違いがあります。個別に見ていきましょう。

RPAと産業ロボットの違い

ロボットと言えば機械の組み立てなどを行う、産業ロボットをイメージする人も多いです。RPAと産業ロボットとの違いは、担当する作業内容です。産業用ロボットは、工場での製造や加工の業務を処理します。RPAはPC上の業務を処理します。

言い換えれば、産業ロボットは人の手足の動作を代行し、RPAはキーボードやマウスによって行われるコンピューター上のタスクを代行します。

RPAとAIの違い

AIとRPAのイメージはよく似ていますが、その違いは自律的な判断ができるかどうかです。RPAは決まった作業を的確かつ迅速に行えますが、内容が流動的な作業は困難です。

一方AIは、機械学習によって例外や変更にも対応して、業務の改善や見直しが行えます。ただし、最近はRPAにAIが連携したClass2レベルのツールも登場しており、いずれ登場するであろうClass3レベルの高度なRPAへの期待が高まっています。

RPAとExcelマクロ機能の違い

ビジネスの現場における一般的な自動化ツールといえば、Excelマクロ機能が代表的です。自動化プロセスを設計すれば、指示どおりに自動計算を行うことが可能です。

しかし、自動化できる範囲はRPAの方が圧倒的に広いという点で、このふたつは大きく異なります。Excelマクロで自動化できる範囲は、ExcelおよびOfficeドキュメント内での作業に限定されます。

それに対してRPAで自動化できる範囲は、コンピューター上にて社内で利用されている、あらゆるアプリケーションまで広がります。

まとめ

RPAとはPC上の定型業務の自動化を意味しますが、今後はより高度な自動化に領域が広がる見込みです。最終的には機械学習の成果を反映した、認知機能があるRPAの登場が期待できます。

このように、RPAでまかなえる業務が拡大する時代であると同時に、RPAツールを使いこなせるエンジニアや知識を保有するコンサルタントの需要も拡大しています。

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