業務・業界・技術

2022.1.25

CRMとは?期待できる効果や導入時のポイント・人気のCRMツールを紹介

コンサル募集

CRMは、多くの企業に導入され、経営戦略の見直しや売上改善に貢献しています。しかし同時に、思ったような成果が得られず、定着しなかったという話を時折耳にすることもあるのではないでしょうか。

今回は、CRMの持つ意義やメリット、効果について詳しく解説。失敗しないCRMシステム構築のために配慮すべき点や、具体的なおすすめCRMツールについてもご紹介していきます。

CRMとは?


CRMとは、「Customer Relationship Management」の略で、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。

CRMはマーケティング手法の1つで、顧客情報を適切に管理することによって顧客との関係性を見直し、向上させるものです。それによって、自社の利益を最大化させることを狙います。

CRMについて、広義と狭義ではそれぞれ次のことを指すのが一般的です。

広義のCRM 顧客との関係性を改善することで利益を得る「CRMマネジメント手法そのもの」を指す
狭義のCRM CRMを実現させるための「ITツール」や「CRMシステム」を指す

CRMと混同しやすいものにSFA(営業支援システム)があります。両者の違いは、目的の対象と業務サポートの範囲です。SFAが営業担当者の活動支援に着目しているのに対し、CRMは顧客情報の管理・分析に着目しています。

また、MAもCRMと混同しがちです。MAは、見込み客の獲得と顧客へのアプローチを管理するツールで、マーケティング担当者の業務の一部を自動化可能であるという強みがあります。

CRMとSFAの違いについては以下でも詳しく解説しています。

▼関連記事
CRMとSFAの違いは?顧客管理ツールの選定方法と失敗しないポイントを解説!

CRMの意義


CRMの持つ意義としては、以下のものが挙げられます。

変化する国内市場・消費者動向へ対応する

CRMは、近年見られる消費者動向・国内市場の変化に対応する手段として非常に有用です。

日本の少子高齢化や国外勢力の台頭により、国内市場は縮小傾向にあります。従来通り、製品の品質や価格に着目して「ただ良いものを作って安く売る」だけでは立ち行かない傾向となっています。

さまざまな価値観が共存する昨今の社会風潮も相まって、たとえば付帯サービスに着目して商品を選ぶなど、消費者ニーズも多様化。経営戦略の立案には工夫が必要な状況です。

このような混沌の時代において、CRMの手法やツールを利用すれば、顧客ニーズをスピーディーかつ正確に分析可能となり、市場変化にもフレキシブルに対応していけます。また、CRMを利用すれば、自社独自の成功法則を分析し、マーケティングに活かすことも可能です。

既存顧客の離脱を防ぎ、顧客生涯価値(LTV)を向上させる

CRMを利用し、顧客ニーズを正確に把握すれば、既存顧客の離脱防止にも役立ちます。顧客生涯価値(LTV)を向上させることで、収益アップを目指せるでしょう。

既存顧客は、多くの企業で売上の中心となっています。さらに、「1:5の法則」のとおり、新規顧客の獲得には、既存顧客の5倍のコストがかかるといわれていることからも、既存顧客の離脱は極力避けたいところです。

出典:シナジーマーケティング マーケティング用語集「1:5の法則」

しかし、先ほども説明した通り、消費者ニーズの多様化が起こっていることから、従来通りの施策をただ機械的に続けるだけでは、既存顧客の流出が発生しがちです。

そんな時のカンフル剤としてもCRMは役立ちます。CRMにより、既存顧客に対して価値ある商品を分析し提供し続けることで、顧客との良好な関係を構築し、顧客生涯価値(LTV)を向上させることが可能となります。

なお、CRMは、インサイドセールスと連携させてリードナーチャリングに活かし、新規顧客の獲得を目指すのにも有効です。

米国シリウスディシジョン社の調査によると、「見込みなし」と判断され放置した見込み客の8割が、2年以内に競合他社から製品を購入したというデータがあります。

出典:日経XTECH 「買う気」を高めるマーケティングオートメーション「第34回 放置した見込み顧客の8割が2年以内に競合に流れる?」

CRMをインサイドセールスに活用し、多くのリードをフォローしつつ購入意欲を高めることで売上アップに貢献できるでしょう。

業務を効率化し社内コストを削減する

CRMには、業務の効率化を図り、社内のコストカットをかなえるという意義もあります。

CRMツールは、顧客情報を一元管理・分析することが可能です。そのため、EXCELなどで部署ごとに運用していた従来システムと比較し、人為的ミスと労力の削減に貢献できます。

CRM導入にはコストがかかりますが、社内コストの削減とスピーディーな顧客対応が見込めるため、長い目で見れば利益につながります。CRMを正しく活用することで、企業が生き残るうえで重要な意義を持ってくるでしょう。

CRMの持つ機能


CRMには、多くの機能があります。その一例を以下の表にまとめます。

CRMの機能 概要
顧客情報管理機能 ・顧客の氏名、住所、年齢、性別といった個人情報を管理
・連絡先だけでなく、購買履歴、取引情報、商談内容、社内の担当者・クレーム情報なども一元管理可能
顧客分析機能 ・登録されている顧客情報を元に分析を行うためのサポートをする
・顧客の購買行動などを分析し、マーケティング戦略に生かすことが可能
営業進捗管理機能 ・顧客ごとの営業進捗状況を管理
・過去の対応内容・今後の予定などを一元管理でき、次回の打ち合わせや訪問営業などのタイミング決めをする際にも役立つ
メール配信機能 ・顧客をセグメント分けしてメール配信
・開封率などを分析することで、効果的なメール配信法則を割り出すことも可能
・既存顧客以外に、見込み客や休眠顧客に対してもセグメントに見合った内容のメールを配信できる
問い合わせ管理機能 ・顧客からの問い合わせ内容を蓄積して管理
・特定の問い合わせに対する回答漏れや二重対応を防ぐ
・問い合わせが多かった内容をまとめて対策を立てたり、FAQの設置で問い合わせ自体を減らしてコストカットできる
アンケート機能 ・アンケートフォームから寄せられた顧客の情報を集計・分析
・ターゲットリストを蓄積できる
セミナー・イベント管理 ・顧客情報の中からセミナー、イベント、展示会に興味がありそうな顧客をリストアップしプロモーションを打つ
・実施後は、顧客情報をアップデートすることで次回以降のセミナーに活用可能

CRM導入で期待できる効果


ここからは、CRMを導入することで期待できる効果や享受しうるメリットについて説明していきます。

情報のリアルタイムな共有でチームプレイしやすくなる

CRMでは、リアルタイムに情報がアップデートされ、メンバー全員で即時に共有可能です。この特徴により、チーム間の連携が取りやすくなります。

CRMを利用すれば、顧客データや対応内容などの属人化を回避し、チームプレイにシフト可能です。チーム内でのサポートやアドバイスも行いやすくなり、対応漏れや二重対応の防止にも役立ちます。

顧客情報の一元管理で部門間連携がしやすくなる

CRMを利用すれば、顧客情報を全社的に一元管理可能です。そのため、チーム内はもとより、部門間の連携も取りやすくなります。部門間の連絡も不要になるため、工数削減にもつながります。

リアルタイムに情報が更新されることとあわせ、部門間で扱う顧客情報にばらつきがなくなり、より適切な施策をスピーディーに実現可能です。

また、個人の成果だけでなく、組織全体の成果まで即座に可視化することで、部門・全社の課題や弱点の把握が容易になります。情報に鮮度があるため、より確度の高い経営戦略を立てられるでしょう。

業務の効率化が図れる

CRMで情報を一元管理することで、複数システムに情報を打ち込む手間が省け、業務の効率化が図れます。素早いデータ分析が可能になるため、PDCAサイクルの改善にも役立つでしょう。

クラウド対応しているCRMなら、外回り中にも社内と同レベルの顧客対応が見込め、外出先からも即時に情報のアップデートが可能です。移動中に情報更新することで、コストカットにも役立ちます。

CRMは、SFAなどの他システムとの連携も可能です。

顧客満足度の向上に貢献できる

CRMを使用すれば、当然のことながら最終的には顧客満足度の向上にも貢献可能です。

顧客の管理や分析がしやすくなるため、顧客ニーズを把握し、一人ひとりにマッチした提案が行えます。複数部門で一貫したやり取りが実現でき、特定の既存顧客に対して適切なサービス提供が可能になります。

CRM導入時に押さえておくべき課題


CRMにはメリットがある一方で、いくつか押さえておくべき課題があります。CRM導入時には、次の課題点について把握しておきましょう。

導入・運用コストがかかる

CRMを利用するには、一定の導入コストや運用コストがかかります。

CRMツールによってかかるコストレベルはさまざまなため、事前の入念なリサーチが必要です。一般的には、機能が多い・処理が速い・データ容量が大きいほどコストがかさむ傾向にあります。

労力がかかる

CRM導入にあたっては、業務フローを見直すなどの手間や労力がかかります。これまでの業務フローを変更したり、新たな作業手順を覚える必要があったりなど、業務の担当者や担当部門から反感を持たれやすい側面があります

社員の協力を仰ぐため、社内向けの説明会や研修を実施する手間もかかります。情報が一元管理されたり、クラウドを利用する場合もあることから、より一層セキュリティ対策を強化する必要もあります。

即時性がない

CRMは、導入後すぐに効果を発揮するわけではありません。

CRMを稼働させるにあたっては、まずは情報の蓄積が必要です。最終的に顧客満足度を向上させるところまで到達し、利益に結び付けるまでには時間がかかることを覚えておきましょう。

失敗しないCRMの選び方


ここからは、CRMツールを導入する際の選定基準やポイントを解説していきます。

導入・運用費用が自社に見合ったものを選ぶ

CRMは、基本的に月々の運用費用がかかります。導入コストとともに運用コストも検討した上で、自社の規模や実現したいプランに見合ったものを選択する必要があります。

高機能なCRMは、高額なコストがかかりがちです。費用対効果を念頭に置き、省ける部分は省くことも視野に入れ、身の丈に合ったCRMツールを選定するのが肝心です。

一般的には、大規模な初期設備投資が必要になりがちなオンプレミス型より、クラウド型のCRMの方が、比較的低コストで導入しやすい傾向にあります。

必要な機能がある製品を選ぶ

CRMツールの導入を検討する際には、実現させたい施策を考え、対応する機能が用意されているか入念にチェックしておくべきです。

CRMツールによって、提供機能はさまざまです。機能がたくさんあるとその分コストがかさむ傾向にありますが、少なすぎても思ったことが実現できず後悔することになりかねません。過不足ない機能を持ったCRMツールを選定するのが肝心です。

デモ版の使用やスモールスタートで使い勝手が良いか確認する

CRMツールは、使い勝手が良いものを選定するという視点も必要です。

CRMは、基本的に毎日使うものです。使いにくいとストレスになり、現場からの不満につながってしまいます。自社の運用スタイルに合っているか、現場の担当者が使いやすいか、慎重に判断するべきです。

検討中のCRMにデモ版があったら入手し、実際に導入する部署で一通り試すと良いでしょう。また、システム導入に際しては、特定部署でスモールスタートを実施するのも有効です。

他ツールとの連携性や拡張性を確認する

CRMと他ツールとのシステム連携を想定しているケースでは、連携可否も確認しておく必要があります。

将来的に業務内容やCRMの使用用途を拡大する見込みがある場合にも、後から機能を追加可能か、あわせて確認しておくと失敗を回避しやすくなります。

セキュリティ対策のしっかりしたツールを選ぶ

セキュリティ対策はどのシステムでも重要ですが、CRMの導入時には特に注力する必要があります。CRMでは、顧客情報を一元的に取り扱うため、万が一情報漏えいするようなことがあれば会社にとって致命的です。

プライバシーマークの取得や、不正アクセス対策についての情報開示は、ベンダー側のセキュリティ意識に対する一つの判断材料になります。CRM選定の際の参考にすると良いでしょう。

サポート体制が整ったツールを選ぶ

後悔のないCRM導入を目指すなら、サポート体制が整ったベンダーのCRMシステムを選択することも大切です。

新たにシステムを導入するとなると、業務フローの変更によって、現場の混乱が予想されます。オペレーションに慣れるまでに時間がかかることや、ミスが勃発することも考えられます。場合によっては作業がストップしたり、データの復旧が必要になったりすることもあるでしょう。

サポート体制が整っていれば、導入に関するアドバイスを受けられることはもちろん、何か問題が起こった時に速やかに解決策を提示してもらうことで、混乱を最小限に抑えられます。

人気のCRMツール5選


ここからは、企業への導入実績が多く人気の高いCRMツールを5つ紹介します。各ツールの特徴や運用コストは以下の表の通りです。

【人気CRMツール比較表】

CRMツール名 形態 運用コスト 特徴
Sales Cloud クラウド型 1ユーザー
3,000~36,000円/月
多機能性・柔軟性・拡張性・連携性の高さに定評あり
Oracle Sales Cloud クラウド型
オンプレミス型
非公開 マーケティング強化や売上予測機能が充実
eセールスマネージャーRemix cloud クラウド型
オンプレミス型
1ユーザー
3,000~11,000円/月
手厚いサポート体制で抜群の定着率を誇る国産CRM
SanSan クラウド型 非公開 名刺管理を出発点にした顧客情報管理や、SFA・MAとの連携が可能
ちきゅう クラウド型 1ユーザー
1,480~9,800円/月
定着率の良い国産CRMで、操作性の良さが魅力

それぞれのCRMツールについて、もう少し具体的に説明していきます。

Sales Cloud

「Sales Cloud」は、株式会社セールスフォース・ドットコム社が提供するCRM・SFAツールです。

多機能でありながら柔軟性や拡張性も高く、APIを用いてさまざまなツールとの連携が可能で、世界中の企業で導入実績があります。サポート体制・トレーニング機能も充実しているため、CRM運用ノウハウや実績のない企業でも安心して導入しやすいでしょう。無料トライアルも可能です。

形態はクラウド型で、運用コストは1ユーザーにつき、月額3,000〜36,000円です。

出典:世界No.1 CRM・SFA – Sales Cloud | セールスフォース・ドットコム

Oracle Sales Cloud

「Oracle Sales Cloud」は、データベースで有名な日本オラクル株式会社が提供するCRMツールです。

同ツールの売りは、マーケティング強化が図りやすい設計になっていることです。顧客データを元にした売上予測機能も充実しています。また、営業分析機能により、営業配置の見直しもスムーズに実現可能です。

データ入力・タスク管理を自動化することで、これらにかかる労力がカットされるのも魅力。クラウド型・オンプレミス型双方の形態に対応し、運用コストは非公開となっているため、要問い合わせが必要です。

eセールスマネージャーRemix cloud

「eセールスマネージャーRemix cloud」は、ソフトブレーン株式会社が提供するCRM・SFAツールです。

日本製のCRMツールであり、導入から運用後まで手厚いサポートを受けられるため、CRMシステムが定着しやすいというメリットがあります。

営業担当者が必要最小限のデータを入力するだけで、アクション管理・タイムライン表示・グラフ分析といった複数のレポート作成を自動的に実行可能です。

クラウド型・オンプレミス型双方の形態に対応し、運用コストは1ユーザーにつき、月額3,000〜11,000円です。

出典:SFA・CRM eセールスマネージャーRemix Cloudの価格・利用形態

SanSan

「SanSan」は、Sansan株式会社が提供する、法人向けの名刺管理サービスです。

名刺管理することで顧客情報管理につなげ、それをSFAやMAといった各システムと連携することで、幅広い業務サポートを実現します。スマートフォンから簡単に名刺情報を登録可能です。

形態はクラウド型で、運用コストについては非公開です。

ちきゅう

「ちきゅう」は、株式会社ジーニーが提供するCRM・SFAツールです。

日本製であり、導入から運用後まで手厚いサポートを受けられるため、各種システムに不慣れでもCRMが定着しやすくなっています。

シンプルな管理画面や、ドラッグ&ドロップによる直観的な操作が可能など、誰でも扱いやすいシステム設計が魅力です。また、GmailやGoogleマップなどと連携可能なため、使用している企業はより業務の効率化が図りやすいでしょう。

形態はクラウド型で、運用コストは1ユーザーにつき、月額1,480〜9,800円です。

出典:料金プラン | 業績向上につながる国産SFA(営業管理ツール)「ちきゅう」

CRMツール導入時のポイント


目的意識もなくただ漠然とCRMを導入しても、目覚ましい成果は得られにくいものです。先述しましたが、あらかじめCRMの使用用途や、組織が目指すべきビジョン、課題点などを明確化しておくことで、導入するCRMにブレがなくなります。

また、経営陣や、実際に業務を行う担当者・担当部門などから、CRMを利用することへの理解や協力を仰ぐことも大切です。社内の根回しが不十分だと、思ったように予算が割けなかったり、業務フローを変更できなかったりするでしょう。

CRMを導入する際には、一度にすべて実行しようとはせず、順序立てて対応していくことも大切です。社員が慣れる時間も考慮し、定着するところまで使い続けられる体制作りに配慮しましょう。

社内のリソースだけでCRMシステムを円滑に運用していくのは、なかなか難易度が高いものです。そんな場合には、CRMのプロフェッショナルであるCRMコンサルタントの出番です。

単なるCRMツール周りの問題だけでなく、社内の課題点なども浮き彫りになることで、よりスムーズに計画が進めやすくなるでしょう。

CRMコンサルタントの仕事内容などについては、以下の記事で詳しく解説しています。

▼関連記事
CRMコンサルタントの仕事内容とは?必要なスキルや資格についても解説!

また、CRMの導入については、以下の記事で詳しく解説しています。

▼関連記事
CRM施策で行うことは?具体的な取り組みやメリット・導入事例も解説

まとめ


CRMシステムを利用すれば、顧客情報を一元管理し、属人化していたデータを共有可能です。また、顧客情報を全社的に有効活用・分析可能であることから、変化する市場ニーズ・顧客ニーズにもフレキシブルに対応できます。CRMは、経営戦略を練る際の大きな手助けとなるでしょう。

しかし、CRMツールの導入・選定にあたっては、慎重に対応すべきポイントもあります。社内に知見やスキルを有した人材がいない場合には、CRMコンサルタントなどプロの出番です。

弊社Liberty Nation(リバティネイション)は、フリーランスに特化したエージェントとして、フリーランスのCRMコンサルタント案件を取り扱っています。興味がある方は、ぜひ以下のバナーからご登録をお願いいたします。

コンサル募集