業務・業界・技術

2022.3.2

アライアンス戦略とは?目的や流れ、メリット・デメリットを解説!

コンサル募集

アライアンス戦略は、2社以上の企業がお互いにメリットがある形で事業提携を行う戦略のことです。

これだけ聞くと、アライアンス戦略にはメリットしかないように感じるかもしれませんが、実際はデメリットも存在します。

したがって現在事業提携を考えている場合は、アライアンス戦略の目的や流れ、メリット・デメリットなどをきちんと理解し、自社にとって最適な戦略かを検討する必要があります。

なお、本稿では以下の悩みを解決できます。

  • アライアンス戦略が何か知りたい
  • アライアンス戦略の目的や流れ、メリット・デメリットを知りたい
  • アライアンスとM&Aの違いを知りたい

ぜひ自社戦略策定の参考にご活用ください。

アライアンス戦略とは

アライアンス戦略とは、企業が外部パートナーと提携し相互メリットを得る戦略です。

提携パターンは「大企業×大企業」「大企業×スタートアップ」などさまざまで、事業拡大や新規事業の立ち上げのためにアライアンス戦略を実行することが多いです。

なお「アライアンス」に関する用語や種類については以下で解説しています。

▼関連記事

アライアンスとはどういう意味?M&Aとの違いについても解説

アライアンス戦略の目的

アライアンス戦略最大の目的は、経済的な相乗効果を得ることです。企業にとっては、経済的なメリットが大きければ良いので、アライアンスの具体的な方法は大きな問題ではありません。

したがって、弱みを補う形のアライアンスもあれば、強みにさらなる拡張性を持たせる形のアライアンスもあり、アライアンスの方針は企業によってさまざまです。

例えば弱みを補うケースでは、技術力は日本屈指だが営業力と顧客ネットワークが不足しているメーカー企業が、世界各地にネットワークを持つ営業会社に販売業務を任せるなどの形があります。

また近年(2022年時点)では、業務効率化や国のDX促進がアライアンス戦略にも影響を及ぼしています。例えば、クラウドを活用しデジタルビジネスを推進することを目的としたアライアンス戦略が、トレンドとなっています。

事実、2022年1月、株式会社NTTデータとAWS(Amazon Web Services)が戦略的協業を開始しました。

NTTデータはAWSの技術支援を活用して、新たなサービスの開発、DX体制の確立・強化を目指しています。また、顧客のDXを支援し加速することも目的としています。

参照:AWSとクラウドを活用したデジタルビジネス推進に関する戦略的協業を開始 | NTTデータ – NTT DATA

アライアンス戦略のメリット

アライアンス戦略の主なメリットを3つご紹介します。

顧客拡大

アライアンス戦略によって、顧客数を増やせます。

例えば、関西の企業が関東の企業とアライアンスを組むことで、これまで接点のなかった企業と関係を持つことができます。

注意点としては、アライアンス戦略を取ることで必ずしも爆発的に顧客数が増えるわけではないという点です。アライアンス先企業の顧客ネットワークを活用するだけで、実際に自社の顧客になるかどうかは不確定だからです。

とはいえ、仮に自社の顧客にできなかったとしても、リードを獲得できるだけで十分な収穫と言えることもあります。

顧客拡大を期待する場合は、アライアンス戦略によってどの商品でどのくらいの顧客増加が見込めそうか仮説を立て、適切な目標を設計することが大切です。

コストの削減

営業リストや技術・ノウハウの共有によって、さまざまなコストを削減できます。

営業リストの共有は顧客開拓や営業人材の採用コストを削減し、技術・ノウハウの共有は学習コストや調達コストの削減に繋がります。

そして、コスト削減にともなって浮いたリソースを他の業務に充てられるため、事業の効率化が図れます。

余剰リソースの有効活用

提携内容によっては、余剰人員を有効活用できます。

例えば、余剰人員を持つ企業Aが人材不足に悩む企業Bへリソースの貸し出しを行うケースでは、コスト人員を収益化できるため大きな経営インパクトがあります。

余った”人”ではなく余った”土地”でも同じことができます。事業規模の縮小にともなって余った土地やテナントも所有権は保持したまま誰かに貸し付ければ、管理費よりも収益の方が大きくなるでしょう。

アライアンス戦略のデメリット

アライアンス戦略のデメリットをご紹介します。

リソース流出リスクがある

アライアンス契約終了時、事業運営に必要不可欠な「ヒト・モノ・カネ」のうち、ヒトとモノが流出する可能性があります。

例えば、A社とB社のアライアンス契約によってA社の社員がB社の社員を引き抜こうとすることがよくあります。

一時とはいえ、身近で優秀な働きぶりを見てしまうとスカウトしたくなる気持ちになるのは仕方がないことでしょう。社員同士の親交が深まりお互いの雇用条件は筒抜けになりやすいです。

そうなった場合、スカウトしたい方はスカウトしたい現在の待遇よりも良い条件でスカウトできるので、スカウト成功率が高まります。

また、技術やノウハウも同様です。秘密保持契約などで情報漏洩を防ごうとしても、完璧にすべての情報を遮断することは非常に難しいです。システマチックに情報のアクセス権限を付与しても、「人の口に戸は立てられない」ため限界があります。

シナジー効果を得られないことがある

M&Aでもシナジーを得られない可能性がありますが、アライアンスはM&Aよりもシナジーを得られない可能性が高いです。

この原因は、アライアンス戦略の実行はM&Aよりも簡単に行えるため、検討不十分なまま提携してしまうことに起因するケースが多いです。

アライアンス提携後の具体的な目標や行動計画、役割分担、責任領域などが不明確のまま提携が完了すると「責任の押し付け合い」や「理想の実現にはリソースが足りない」などのトラブルが発生します。

また、蓋を開けてみれば「想定通りのアセットが提携先の事業にはなかった」ということも少なくありません。

M&Aよりも簡単に行えるとは言え、アライアンスの締結にはそれなりのコストがかかるため、できる限り慎重に取り組む必要があります。

アライアンス戦略とM&Aの違い

アライアンス戦略とM&Aには大きな違いがあります。分かりやすいように、それぞれのメリットとデメリットを下表に並べました。

戦略 メリット デメリット
M&A(買収) ・譲受側は全てをコントロールしやすい
・譲渡側は債務をリセットできる
・コストが高い
・買収価格が株価に影響する
・組織風土の違いによる摩擦
・関係を解消しにくい
M&A(合併) ・買収よりコストが低い
・お互いの競争優位性を維持することが可能
・取引/法的構造の複雑化
・組織風土の違いによる摩擦
・関係を解消しにくい
アライアンス ・ほぼ資金不要
・法的手続きが簡単
・関係を解消しやすい
・シナジー創出が難しい
・人材とノウハウ/技術の流出リスクが高い

両者における大きな違いは「コスト」「関係解消の難易度」「シナジー創出の難易度」の3つです。

基本的にはコストや時間をかけたくない場合に、人材やノウハウなどの流出リスクよりもシナジー創出によるメリットの方が大きいと判断できる場合は、アライアンス戦略を選択する形になるでしょう。

アライアンス戦略の流れ

アライアンス戦略の流れを順番に解説します。

①目的の明確化

最初に、アライアンス戦略の目的を明確にします。

アライアンス戦略は経営戦略に基づいて行われるものです。そのため、基本的には経営戦略で設定されたいずれかのKGI/KPIの達成がアライアンス戦略の目的になります。

アライアンス戦略に期待する効果やリスクの洗い出しを行い、他社のアセットを活用した方が良いかどうかを判断します。

②提携先候補をリストアップ

目的が明確になったら、目的を実現できうる提携先候補をリストアップします。この際、コンサルティング会社などの外部パートナーへの依頼も検討します。

例えば、NTTデータ経営研究所では「アライアンスパートナーの探索」や「協業モデルの立案」「事業性評価」などを行ってくれます。

外部パートナーによってアライアンス戦略の策定が得意な業種が限定的な場合もあるため、提携先のリストアップに外部パートナーの力を借りる場合は、検討中のアライアンス戦略を実現できそうなパートナーを選定することが重要です。

①〜②までにかかる期間は短くて3ヶ月程度、大規模なアライアンスでも半年〜1年程度で完了させることが多いです。

③提携交渉

有力な提携先候補が見つかったら、具体的にアライアンスの交渉を行います。

提携範囲や提携内容を具体的に詰めていくフェーズで、提携後の運用方法も詳細に決めていきます。このフェーズは非常に重要なため、期間にして約2〜3ヶ月ほど要することが多いです。

交渉時は「いつから、どれくらいのキャッシュが見込めるのか」が伝えられるように準備しましょう。提携後、半年〜1年程度で両者にとって大きなメリット(キャッシュ)が生まれる計画を立てておくことが重要です。

いつ、どんなメリットがあるのかが分からなければ、交渉の受け手側は検討することもできません。

アライアンス戦略の成功事例

アライアンス戦略の成功事例を2つご紹介します。

事例①:アクセンチュア×Salesforce

2004年からアライアンスパートナー契約を結ぶ両社は、これまでも数々の成功をクライアントに提供してきました。

2020年以降のコロナ流行によって、デジタル化の遅れが顕在化した企業が多く現れました。

まだ本格的なデータドリブンでの変革を成し遂げた企業が少ない中で、両社は2021年に、ある国内科学素材メーカー向けにsalesforce cloudを導入し、それまでの「経験・勘・度胸」に頼っていた営業プロセスを可視化して、案件をステージごとに管理できるように整理しました。

さらに、優秀な営業マンの行動や「勝ちパターン」を形式化してSalesforce上に落とし込むことで、新人の営業マンであっても一定の成果を上げられる「型」を構築することで、営業スタイル変革を成功させました。

また、人材交流やSalesforceの資格習得による技術力の向上実績も目をひきます。

参照:サステナビリティが競合優位性に。Salesforceで実現するサステナブルなデジタルトランスフォーメーション | アクセンチュア

事例②:トヨタ×フォード・モーター・カンパニー

日本が誇る自動車メーカー「トヨタ自動車」と、近代自動車産業のリーディングカンパニーである米国の「フォード・モーター・カンパニー」が、2017年1月にアライアンス(技術提携)を組みました。

本事例はSDL(スマートデバイスリンク*1)の技術に関するアライアンスです。SDLを自動車業界のデファクトスタンダードにするため、開発スピードを早める目的で技術提携が実施されました。

*1:SDLとは、カーナビなどの車載機器を通じ、スマートフォン用アプリを操作する技術

参照:フォードとトヨタ自動車、スマートフォンアプリとクルマをつなげる 「スマートデバイスリンク(SDL)」の業界標準化に向けたコンソーシアムを設立 | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

事例③:東芝×マイクロソフト

2005年6月に東芝とマイクロソフトがクロスライセンス契約を締結しました。

主にハードウェアに関する特許を持つ東芝とソフトウェアやPCに関する特許を持つマイクロソフトは、それぞれの技術を持ち寄ってPCや家電などの精密機器領域でイノベーションを加速させました。

このアライアンスは両社が最初から望んでいたものではなく、マイクロソフト社の担当者が東芝への粘り強い交渉によって実現されたものです。

アライアンス戦略はスマートな取り組みに見えますが、裏側では地道な交渉が行われています。何度か挑戦して失敗しても、諦めずに交渉し続けることが成功の近道かもしれません。

参照: マイクロソフトと東芝の協業関係の強化について

アライアンス戦略の注意点

アライアンス戦略を選択する上で注意すべき点をご紹介します。

提携先企業のセキュリティ対策を確認する

提携後に意図しない機密情報が漏洩しないか、提携先企業のセキュリティ対策状況を確認しましょう。

秘密保持契約(NDA)を締結していたとしても、情報セキュリティ対策が不十分な企業と提携してしまうと個人情報を含む機密情報が漏洩するリスクが高いです。

そもそも機密情報を提携先企業に開示・共有しないような取り組みにする方法も手段としてはありますが、両者のアセットを最大限に活用するには機密情報の開示が必要不可欠です。

情報セキュリティスペシャリストの存在有無や、情報漏洩時の損害賠償責任の有無などは契約段階で必ず確認しましょう。

提携による成果に依存しない

アライアンス戦略はシナジーなどのメリットを期待して行われるものですが、成果が保証されている取り組みではありません。

アライアンス戦略によって一定の効果を見込むのは良いですが、提携による成果に依存した事業戦略にならないようリスクを分散させるように注意しましょう。

まとめ

アライアンス戦略は、事業成長を効率的に進める上で有効な手段です。

似た取り組みに「M&A」がありますが、アライアンス戦略が良いかM&Aが良いかは企業の状況によって異なります。自社にとって最も適切な選択は何か、慎重に検討するようにしましょう。

なお、アライアンス戦略のようなビジネスの上流にあたる「事業戦略の立案」ができる人材は、市場価値が非常に高いです。

これからのキャリアパスとして、事業戦略や経営戦略の立案およびその支援ができるようになりたいと考えている方は、ぜひ弊社Liberty Nationをご活用ください。

Liberty Nationでは、戦略コンサルティング案件やM&Aコンサルティング案件などビジネスの上流に携われるお仕事を多数ご紹介しています。

フルリモートや週2勤務など、希望の働き方にマッチする案件をご紹介しておりますので、もしご興味がある方は以下のバナーよりご登録ください。

コンサル募集