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2022.1.31

DXの戦略設計に役立つフレームワーク7選!重要性と注意点も徹底解説!

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2018年に経済産業省が発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」によると、日本企業がDXを推進できなかった場合は2025年以降に毎年12兆円規模の損失が発生し続けることが分かっています。

出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

この経済産業省による警鐘と新型コロナウイルスによる生活様式の変化を受けて、各企業はDX推進の重要性を理解し、DXによる大規模な事業改革を検討しています。

しかし、実際にDXに着手しようとしても「戦略の練り方が分からない」という状態に陥ることが多いです。

そこで本稿では、DXの戦略設計に役立つフレームワークを7つご紹介するとともに、フレームワーク活用時の注意点を分かりやすく解説します。

DXの戦略設計に役立つフレームワークの重要性

DXの戦略設計にビジネスフレームワークは大いに役立ちます。

なぜなら、思考すべき観点やテーマがあらかじめ与えられているため、フレームワークに沿って必要な情報を埋めていくだけで戦略設計の材料を集められるからです。

そこで本稿では、全7種類のフレームワークをご紹介します。これらはどのようなビジネスでも役に立つ便利なツールですが、注意点もあります。

それは、各フレームワークで分析できる範囲(スコープ)や分析の切り口が異なることを留意すること、そして最終的な示唆出しのタイミングでは、それぞれのフレームワークで整理したポイントを繋げて考えることです。

以上の注意点を踏まえて、各種フレームワークの説明を読み進めてください。

なおDXとは何か具体的な内容に関しては、以下の記事にて解説しています。

▼関連記事

DXとは?定義や必要性、導入するメリットを成功事例とともに解説!

DXの戦略設計に役立つフレームワーク7選

DXの戦略を考えるにあたって役立つビジネスフレームワークを7つご紹介します。

  • ビジョン・ミッション・バリュー
  • PEST分析
  • 3C分析
  • SWOT分析
  • 5フォース分析
  • バリューチェーン分析
  • ビジネスモデルキャンパス

ビジョン・ミッション・バリュー(VMV)

ビジョン・ミッション・バリュー(以下、VMV)は、事業戦略の上位概念を定めるフレームワークです。戦略がビジネスの最上流と思われがちですが、戦略はVMVを実現するためのものです。

したがって、DX戦略も例外なくVMVの実現に向けて立案されるべきものですが、市場環境の変化やDX推進によって前提が大きく変わるため、既存のVMVを進化させられる可能性があります。

DXを進めるのであれば、これを機に企業のVMVを改めて検討してもよいかもしれません。

PEST分析

PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(テクノロジー)の4つの頭文字をとった略語で、外部環境を分析するためのフレームワークです。

外部環境が自社にとってどのような影響(プラス or マイナス)をもたらすのかを評価するために、マーケティングの第一人者であるフィリップ・コトラーが編み出しました。

PEST分析で分析すべき項目例は以下の通りです。

なお上図に記載のように、PEST分析で調査した項目は以降で行うSWOT分析のOpportunity(機会)とThread(脅威)に反映でき、戦略立案や製品開発に役立てることが可能です。

3C分析

3C分析は、Company(自社)、Customer(顧客・市場)、Competitor(競合)の3つの”C”を分析するフレームワークです。

それぞれの領域で調査すべき項目例は、以下の通りです。

Company(自社) ・企業理念(VMV)
・自社事業の売上
・自社製品の市場シェア
・自社事業の強み、弱み
Customer(顧客・市場) ・業界市場規模
・市場の成長性
・顧客ニーズ
・顧客行動(消費・購買)
Competitor(競合) ・競合事業の売上
・競合製品の市場シェア
・競合の業界ポジション
・自社観点の脅威

3C分析において特に注意すべきポイントは、以下の2点です。

  1. 顧客情報は可能な限り生の声を集めること
  2. BtoB企業は自社顧客の顧客まで調査すること

①について、昨今はインターネット調査で簡単に大量のサンプルデータが取得できるようになりましたが、N=1の定型化されていない生の声が戦略の成否を分けることがあるからです。可能な限り、自分の足で生の声を取りにいくようにしましょう。

②について、顧客理解はマーケティングの基礎です。よって、自社顧客の顧客を取り巻く環境についても3C分析を行い、顧客理解を深めることが重要です。

SWOT分析

SWOT分析はStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Thread(脅威)の4つの頭文字をとった略語で、内部環境と外部環境を分析するためのフレームワークです。

整理された内部環境と外部環境を以下のように組み合わせると、戦略の方針を決められます。

戦略方針 組み合わせ1 組み合わせ2
積極化戦略 Strength(強み) Opportunity(機会)
差別化戦略 Strength(強み) Thread(脅威)
段階的戦略 Weakness(弱み) Opportunity(機会)
撤退戦略 Weakness(弱み) Thread(脅威)

 

戦略方針 解説
積極化戦略 プラスの要因が重なっているので積極的な戦略を取り入れるべきと判断できる。
差別化戦略 強みに対して脅威が迫っているのであれば、早急な差別化戦略が必要と判断できる。
段階的戦略 弱みに対して機会がある場合は、自社を段階的に改善していく必要があると判断できる。
撤退戦略 弱みに対して脅威が迫っている場合、戦略的に撤退した方がROIが高くなると判断できる。

なおSWOT分析で捉えるべき内部環境はビジネスモデルキャンパスで、外部環境はPEST分析や5フォース分析などで整理できます(ビジネスモデルキャンパス、5フォース分析の詳細は後述します)。

5フォース分析

5フォース分析は、既存競合他社、新規参入企業、供給業者(売り手)、顧客(買い手)、代替品の5つの脅威を洗い出し、自社の収益性を分析するフレームワークです。

DXによって既存事業の改革や新規参入を検討する場合は、ビジネスを取り巻く環境分析が必要になるため、5フォース分析が役立ちます。

5フォース分析は「収益性は競争率の高低に依存する」という極めて当然の前提に成り立つ理論です。

したがって、収益性を左右する要因を洗い出し、「現在の戦略で十分な収益が見込めるか」「現状の戦略で十分な収益が見込めない場合、ネックとなる要因を排除できるか」を明確にすることが重要です。

なお、先述のSWOT分析における”T”はこの5フォース分析で整理できます。上手にフレームワークを行き来しながら情報を整理しましょう。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、仕入れから販売後のアフターサービスまでの一連の流れを整理することで自社(または競合)の付加価値を分析するフレームワークです。

DX戦略策定の文脈では、バリューチェーン分析によってどの工程でどのデジタル技術を導入するかを検討しやすくなります。

なお、SWOT分析のSW部分はバリューチェーン分析で一部整理可能です。「支援活動」と「主活動」の各領域における強みと弱みを洗い出しましょう。

ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネス構造を可視化することで全体像と自社の強みや弱みを分析するフレームワークです。

ビジネスモデルキャンバスで埋めるべき項目は、全部で9個です。それぞれの概要は以下の通りです。

顧客セグメント
(CS:Customer Segments)
重要な顧客セグメント/ターゲットを記載。
価値提案
(VP:Value Propositions)
サービスの価値、満たせる顧客ニーズを記載。
チャネル
(CH:Channels)
顧客へのリーチ経路/タッチポイントを記載。
顧客との関係
(CR:Customer Relationships)
顧客と関係を持つ手段を記載。
収益の流れ
(RS:Revenue Streams)
顧客が何にお金を払うのかを記載。
リソース
(KR:Key Resources)
価値提供に必要なリソースを記載。
主要活動
(KA:Key Activities)
価値提供に必要な活動内容を記載。
パートナー
(KP:Key Partners)
代替不可能な協業者を記載。
コスト構造
(CS:Cost Structure)
ビジネス運営にかかるコストを記載。

ビジネスモデルキャンバスは、1枚のシートに抽象化された各項目を記載します。そのため、ビジネスモデルの全体像の把握に役立ちますが、各項目の詳細を把握するには不十分です。

したがって、ビジネスモデルで各項目の関係性を把握できたら、顧客環境にズームインした分析や外部環境までズームアウトした分析を行い、分析結果をもとにビジネスモデルをチューニングすることが重要です。

ビジネスフレームワークについては、以下の記事でも解説しています。

▼関連記事

データ分析に使えるフレームワーク16選を目的別に徹底紹介!売上分析向けやビジネス向けも!

DXの戦略設計にフレームワークを活用する際の注意点

ここまで7つのフレームワークを紹介しました。それぞれのフレームワークは非常に便利なツールですが、活用方法を誤ると最終的にビジネスに役立つ示唆を出せない可能性があります。

そこでフレームワークを活用する際の注意点を2つご紹介します。

ファクトベースの分析を行う

思い込みや慣れなどの主観からは分析せず、数値的な根拠やデータを基に分析するようにしましょう。なぜなら「事実」と「解釈」を区分しながら情報を整理しなければ、価値のある示唆を出せないからです。

また、この際「数値がすべてであり、事実である」と思われがちですが、これには語弊があります。厳密には「数値が持つ意味」まで理解しなければいけません。

たとえば「平均値」という数値は、計算の元となる母集団(サンプル)によって大きく前後する値です。同じ調査を行っても調査対象期間や母集団の内訳(インタビュイーの年齢、男女比率など)が異なると平均値も異なります。

たしかにその調査によって導きだされた平均値も一つの「事実」ではありますが、その「事実(数値が持つ意味)」を適切に「解釈」できなければ、母集団が適切ではなかった場合に見当違いな示唆を出してしまうでしょう。

分析の目的を明確にする

フレームワークに沿って情報を整理することは、手段であって目的ではありません。

「なぜ、そのフレームワークを用いて分析するのか」という分析目的を明確に回答できる状態にしてから、フレームワークを活用するようにしましょう。

目的のない分析は、分析の方向性が定まっていないため無駄な作業を行うリスクが高いうえに、最終的に何もアウトプットできない可能性が高まります。

最終的に何の意思決定を行う必要があり、意思決定のために必要な材料や判断基準は何かを知り、それらを収集するための分析であることを忘れないようにしましょう。

まとめ

冒頭でもお伝えしたように、近年「DX推進」が各企業、ひいては日本全体の重要テーマとして取り上げられています。

そのため、フレームワークを上手に活用し、DXの戦略設計ができるようになれば、人材市場で引く手数多になることは間違いありません。

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