• TOP
  • 事例
  • その他DX
  • 【データ・AI活用×海外事例】米国沿岸域の自治体_地域性を考慮した高速かつ高精度な洪水リスク予測AIの活用により、洪水被害額削減に期待

その他DX

ソリューション

データ・AI活用×海外事例

自治体

2025.9.19

【データ・AI活用×海外事例】米国沿岸域の自治体_地域性を考慮した高速かつ高精度な洪水リスク予測AIの活用により、洪水被害額削減に期待

要約

  • 米国沿岸域の自治体では被害額が大きい洪水の予測をしたいが、従来の方法では、データ統合に専門的知識を要すること、スーパーコンピューターの利用料が高額なこと、地域特性が考慮できず予測精度が低いことといった課題から実現が困難だった
  • 外部の研究チームは、複数機関のデータをリアルタイムに統合し、地域差を補正しながら高速かつ信頼性の高い洪水リスク予測を誰でもブラウザ上で利用できるAIプラットフォーム「Coastal Defense Pro」を開発した
  • 予測に必要なコストが大幅に削減されたことで中小規模の自治体でも利用可能となり、さらに、予測精度が大幅に向上し、1回の洪水あたり約32億~48億円の被害額削減が期待できる

背景

米国沿岸域の自治体では、気候変動による海面上昇や猛烈な豪雨、台風などの頻発しています。特に被害額の大きい自然災害の一つである洪水において、「どこが、いつ、どれくらい危ないのか」を素早く把握する仕組みが求められていました。

課題

従来の沿岸域の洪水リスクの予測は、下記の理由により中小規模の自治体では実現が困難な状況でした。

・予測に使う複数データの統合に専門的知識が必要:
洪水予測には NOAA(海洋大気庁)、USGS(地質調査所)、FEMA(緊急管理庁)など複数の機関のデータが必要で、それぞれ形式や更新頻度が違うため、専門家でなければ扱いづらく、自治体が独自に統合するのは困難でした。

・スーパーコンピューターを使った高度なシミュレーションにかかるコストが大きい:
これまでの洪水予測は、海や川の水の動きを物理法則に従って再現し、水位・流速・浸水範囲をシミュレーションする方法に頼ってきました。しかし、この方法は専門的で高度な知識と、スーパーコンピュータを数百〜数千時間動かすほどの計算能力が必要です。そのため、専門家への依頼や、スーパーコンピューターの使用料の負担が大きく、中小規模の自治体にとっては実現が困難でした。

・地域ごとの地形を考慮していないため予測精度が低い:
従来の洪水予測モデルはすべての地域において一律のロジックで予測水位を算出していたため、地域別の地形の差が原因で予測が大きく外れることがありました。たとえばチェサピーク湾では、実際の水位の約3倍(197%)も高く予測してしまうケースが報告されています。

解決策

米国海軍士官学校の土木・海洋建築工学科に所属する ポール・マグリッカ氏らの研究チームは、沿岸工学とAIを組み合わせ、洪水リスクを予測できるAIプラットフォーム「Coastal Defense Pro」を開発しました。
主な機能

・複数機関のデータを自動で統合:
洪水予測に必要なNOAA(海洋大気庁)、USGS(地質調査所)、FEMA(緊急管理庁)など複数の機関のデータをリアルタイムで自動的に取り込み、AIで活用しやすい形で統合します。

・誰でも利用できる環境を整備:
ブラウザ上からインストール不要で、専門的な知識を要さず即時に予測が可能です。

・地域ごとの予測のズレを自動補正:
地域ごとの地形の差による予測のずれを、複数のAIモデルを組み合わせることで自動で補正します。基準となる洪水予測結果に対して、湾の形や湿地・川岸・海岸付近の構造物などの地域の特徴を考慮して、適切に補正をすることでより精度の高い値を算出します。

・リアルタイムな予測:
予測の結果は平均3秒未満で表示され、システム全体の稼働率も99%以上を担保し、災害時に「必要なときにすぐ使える」信頼性を確保しています。

成果

・予測に必要なコストが大幅に削減され、自治体で利用するハードルが下がった
専門家やスーパーコンピューターを利用した従来方法に比べ、コストを大幅に軽減し、中小規模の自治体でも活用が可能になりました。

・予測精度が大幅に向上
1992〜2024年15件の主要嵐を従来手法の予測と比較した結果、予測モデルの精度を評価するための指標であるRMSEが2.267 mから0.436 m(数字が小さいほど良い)に改善されました。

・洪水の被害額削減が期待できる
1回の洪水あたり2,200万〜3,300万ドル(約32億~48億円)の被害額の削減が期待できる

実際の実現方法

同社が導入したシステムを、「Liberty DSP」で再現することが可能です。

LibatyDSP

「Liberty DSP」は、Liberty Dataが提供する、蓄積→分析・可視化→事象予測→事業最適化までを一気通貫で有機的に自動遂行することを志向したデータサイエンスプラットフォームです。

サービスサイト「Liberty DSP」 https://www.liberty-nation.com/product/

参考記事:
https://www.devdiscourse.com/article/technology/3517944-ai-makes-coastal-flood-risk-assessment-instant-and-precise
https://www.mdpi.com/2073-4441/17/15/2231?utm_source=chatgpt.com